メモ
| 批判的吟味の観点 | 主な着目ポイント | 本試験におけるリスク/問題点 | 
|---|---|---|
| ① 研究デザイン | ランダム化・割付 concealment・ブラインドの方法 | 「二重盲検」とだけ記載。乱数生成法も割付表の管理方法も不明 → 選択バイアス高 | 
| ② アウトカム | 患者にとって意味のある客観的指標か/測定法は妥当か | 評価項目は医師判定の総合評価「有効以上」。 ✓ 痛みスケール(VAS 等)なし ✓ 判定基準が不明瞭 → 測定・判断バイアス  | 
| ③ 報告の完全性 | 追跡率・解析集団・副次評価項目 | 脱落例・ITT 解析の有無が不明。添付文書では「有効率」しか報告されず、安全性や二次アウトカムは省略 → 情報バイアス | 
| ④ 統計解析 | 力量設計・CI 表示・多重検定 | サンプルサイズ根拠なし。結果は「p < 0.05」のみ提示。NNT≈4 だが 95%CI 未掲載(自前計算で 12–40%) → 不精確性 | 
| ⑤ 年代・出版形態 | ピアレビュー・登録・透明性 | 1969 年の社内試験(文献 4)で未査読。登録前時代ゆえ 選択的報告バイアス の懸念大 KEGG | 
| ⑥ 外的妥当性 | 患者背景・併用治療・用量 | ・抗菌薬併用有無が不明 ・急性扁桃炎/咽喉頭炎/口内炎をごちゃ混ぜ ・1.5 g/日は現行 OTC 上限 750 mg/日に必ずしも一致せず → 一般化可能性の制限  | 
| ⑦ 整合性(他研究との一貫性) | 同様の RCT の有無 | 同系統の追試は 1990 年に 129 例の試験がある程度で,同じく方法論は脆弱。近年の系統的レビューでも「十分な RCT は見当たらない」と結論 宗仁会 | 
🧩 なぜ「古い試験ほど効果が大きく見える」ことが多いのか?
- 方法論的進歩の前夜
1970 年代以前はランダム化手続き・盲検化・報告様式が標準化されておらず,バイアスを防ぐ設計そのものが甘い。 - 出版バイアス/産業バイアス
製造企業が承認用に行った社内試験は,「有効」と言えたものだけが承認申請資料や添付文書に残りやすい。否定的データは闇に消えがち。 - サンプルサイズ不足 & 統計の緩さ
当時は小規模試験でも p 値だけで肯定的に解釈される傾向があり,効果量を過大評価しやすい(“small-study effect”)。 - 標準治療の変遷
50 年前は溶連菌迅速検査も NSAIDs も存在しない。併用療法・自然経過が現在とは異なるため,外挿が難しい。 
📌 臨床的インパクトをどう読むか?
- NNT ≈ 4 と聞くと魅力的だが,信頼区間が広く方法論リスクも高い。
 - 安全性:TXA は比較的安全とはいえ,血栓リスクや腎排泄性を考えると「何となく出しやすい薬」ではない。
 - 代替薬:急性咽頭痛のガイドラインは鎮痛解熱薬(アセトアミノフェン/NSAIDs)を推奨しており,TXA は登場しない 往診とオンライン診療ならファストドクター。
 
🚦 まとめ(現時点のエビデンス・グレード)
| 項目 | 評価 | 
|---|---|
| エビデンス量 | RCT 2 本(1969・1990),いずれも小規模・未査読 | 
| 質(Risk of Bias) | 高 | 
| 一貫性 | 評価困難(試験数が少ない) | 
| 直接性 | 一部間接(複合アウトカム・混合疾患群) | 
| 精確性 | 不十分(CI 報告なし) | 
| 出版バイアス | 高リスク | 
➡ GRADE:Very Low(極めて不確実)
「多少効くかもしれないが,確信は極めて低い」と評価するのが妥当です。添付文書データだけをもって “確立した治療選択肢” と位置づけるのは慎重に —— というのが批判的吟味の結論になります。

  
  
  
  