葛根湯は万能じゃない?――使いすぎると『血』を消耗する理由を徹底解説
はじめに
風邪の引き始めに漢方薬局でも市販薬でも人気の「葛根湯(かっこんとう)」。
「とりあえず風邪なら葛根湯でしょ!」
そんなイメージを持っている方も多いのではないでしょうか。
しかし、実は葛根湯には正しく使わないと体力(気血)を消耗してしまうリスクがあることをご存じでしょうか?
この記事では、
- なぜ葛根湯が血を消耗するのか?
- 汗と血の関係とは?
- 正しい葛根湯の使い方
を一緒に深掘りしていきます。
ぜひあなたも、私と同じように「なるほど!」を体験していってください。
葛根湯ってどんな薬?
まず、葛根湯の基本からおさらいしましょう。
葛根湯は、
- 体表を温め
- 発汗させることで
- 外から侵入してきた風邪(ふうじゃ)や寒邪(かんじゃ)を追い払う
ための漢方薬です。
漢方の分類では「辛温解表剤(しんおんげひょうざい)」にあたります。
つまり、風邪の初期に「寒気がする」「汗が出ない」「首筋がこわばる」というときに、
汗をかいて病邪を外へ出してしまおう!という使い方が理想です。
葛根湯の「落とし穴」
ところが。
ここで疑問が湧きました。
「もしすでに汗だくの人に葛根湯を使ったらどうなるの?」
答えは、
「さらに汗をかかせてしまい、体力=血を消耗する」
です。
でも、なぜ「汗をかきすぎると血まで消耗する」のでしょう?
ここを理解するには、さらに漢方の基本「津液(しんえき)」の考え方を知る必要があります。
津液とは?~体内の水分システム~
漢方では、体の中のあらゆる水分を「津液」と呼びます。
さらに、津液には2種類あります。
種類 | 特徴 |
津(しん) | サラサラした水分。汗・涙・唾液など。体表や粘膜を潤す。 |
液(えき) | しっとりした水分。関節、脳、内臓などを潤す。 |
汗はこのうち「津」にあたります。
つまり、汗をかくというのは、体にとって貴重なサラサラ水分を体外に放出しているということ。
これだけでも体は少しずつ乾いていきます。
血と汗の深い関係
ここでもうひとつ大事な考え方が登場します。
それは、
汗も血も、津液から生まれる兄弟のような存在
ということ。
津液が変化して血になったり、汗になったりします。
だから、汗をかきすぎると津液が不足し、それが血の不足=血虚(けっきょ)へとつながるのです。
さらに漢方では、血の管理は「心(しん)」が担当していると考えます。
心は血を巡らせ、汗の出方もコントロールしています。
つまり、
- 血が不足すると汗もコントロールできなくなる
- 汗が出すぎると血も減ってしまう
…という悪循環に陥るわけです。
実際に起こる「葛根湯の使いすぎ問題」
例えば、
- すでに発熱して汗をたくさんかいている
- 喉がカラカラに乾いてヒリヒリする
- 体力が落ちてぐったりしている
そんな人に葛根湯を使ったらどうなるでしょう?
葛根湯はさらに汗をかかせようとします。
すると、
- 水分がどんどん体外へ出てしまう
- 血も一緒に減る
- 体力が急激に落ちる
- 回復が遅れ、かえって長引く
という悪循環が起こるのです。
これこそが、
「葛根湯を使いすぎると血を消耗する」
と言われる理由です。
葛根湯が本当に合う人とは?
では、葛根湯がぴったり合うのはどんな人でしょうか?
ポイントは3つあります。
- 寒気がする
- 汗が出ていない
- 首筋のこわばりがある
この3つが揃っているなら、葛根湯はとても良い選択になります。
逆に、
- 発熱して汗がダラダラ出ている
- 喉が焼けるように痛い
- 身体の内側(裏)の方に症状が進んでいる
なら、葛根湯ではなく**別の漢方(例えば銀翹散など)**を検討すべきです。
まとめ:葛根湯は「選んで」使う薬
今回、葛根湯について深堀りしてきましたが、改めて感じるのは、
漢方薬は**「誰にでも・いつでも」使えるものではない**ということ。
- 汗は血の兄弟
- 汗の出しすぎ=体力と血液の消耗
- 葛根湯は汗をかかせる薬なので「汗だくの人」には逆効果
この漢方的な見方を知ると、普段何気なく飲んでいる薬にも「使い方の奥深さ」が見えてきます。
これからは、
「自分の体に本当に合った薬を選ぶ目」
を育てていきたいですね。
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