実は“即効性があるもの”も多い
こんにちは、薬剤師きたくんです。
「漢方って体質改善だから、効くまでに時間がかかるんでしょ?」
これ、よく聞かれる質問なんですが――実は**「即効性があるもの」**もたくさんあるんです。
今日は「漢方薬の即効性」と「時間がかかる本質的な治療」の違いについて、じっくり分かりやすく解説していきます!
■ 漢方には「標治(ひょうち)」と「本治(ほんち)」がある
まず大事なのが、この2つの考え方。
◎標治(ひょうち)=今のつらい症状を取ること
例えば:
- むくみをすぐに取る
- 足のつりを止める
- お腹の張りを改善する
これは「今この瞬間にある不調」をピンポイントで楽にする治療です。
◎本治(ほんち)=体質そのものを整えること
例えば:
- なぜむくみやすいのか?
- なぜ足がつりやすいのか?
- なぜ胃腸の動きが悪いのか?
その「根本的な体質のゆがみ」にアプローチしていくのが本治です。
つまり、漢方薬には「今を楽にする働き」と「体質を整える働き」の両方があるんですね。
■ 「効いた!」は標治の反応がほとんど
まず知っておいてほしいのが、「漢方薬って意外とすぐ効く!」という事例がたくさんあること。
実際の例を見てみましょう。
【例①】芍薬甘草湯の“こむら返り”に対する即効性
足がつって目が覚めたときに芍薬甘草湯を飲むと、数分以内に痛みが和らぐこともあります。これは芍薬と甘草の「抗痙攣作用」がすぐに筋肉に働きかけるから。
まさにこれは「標治」です。
でも「なんでそんなに足がつりやすいの?」という体質改善は別の話。
水分不足、肝血の不足、年齢による腎の衰え――それらを根本から整えるには時間がかかります。
【例②】当帰芍薬散はむくみに効く。でも…
当帰芍薬散には「茯苓、白朮、沢瀉」といった利水薬が含まれています。
だから、むくみ自体は飲んで数日でスッと引くことも多いです。
でも、そのむくみの根っこには「血虚」や「肝血不足」があります。
血を増やしていくという“本治”の部分は、2〜3か月以上かけてじっくり行っていくものです。
【例③】六君子湯は胃の不快感にすぐ効く。でも…
六君子湯は、脾(胃腸)の気を補って、胃の中の不要な水分(痰湿)を排出する薬。
食後の胃もたれやゲップ、膨満感には数回の服用でスッキリすることもあります。
でも、その「痰湿」がたまりやすい体質――つまり「脾胃気虚(ひいききょ)」の改善には週〜月単位の継続が必要。
ここも「標治」と「本治」の両立が必要なポイントです。
■ 補う「気」と「血」と「腎」の違い 〜かかる時間の目安〜
漢方では、体のエネルギー源である 「気」、体を潤す 「血」、生命力の土台である 「腎」 を補う治療が行われますが、この3つ、回復にかかる時間が違います。
◎「気」を補うのは比較的早い(陽の中の陽)
→ 例:六君子湯、補中益気湯
→ 食欲や元気がない状態なら、1〜2週間で変化を感じる人もいます。
◎「血」を補うのは中程度の時間がかかる(陽の中の陰)
→ 例:当帰芍薬散、四物湯
→ 肌の潤い、月経トラブル、貧血体質の改善には2〜3か月以上。
◎「腎」を補うのは時間がかかる(陰の中の陰)
→ 例:八味地黄丸、牛車腎気丸
→ 冷え、頻尿、慢性疲労、性機能の低下などの改善には、3か月〜半年以上の継続が必要です。
■ なぜ時間がかかるの?「陰」を補う治療の特徴
「気」はエネルギーなので巡らせるのが比較的早いですが、「血」や「腎」は物質的な要素が強いため、“作る・蓄える”のに時間がかかるんです。
さらに分類すると:
種別 | 内容 | 改善にかかる目安 |
---|---|---|
陽の中の陽 | 体温、発汗など | 即日〜数日 |
陽の中の陰 | 脾胃の気(六君子湯) | 数週間 |
陰の中の陽 | 血、営血(四物湯) | 2〜3か月 |
陰の中の陰 | 腎陰(八味地黄丸) | 3〜6か月以上 |
このように、補う対象によって時間感覚が全く違うんですね。
■ 「効かない」と思う前に見直してほしいこと
「2〜3日飲んだけど変わらない」という相談、よく受けます。
でもそれが「本治」だった場合、それだけでは当然効果は感じにくいんです。
大事なのは:
- 即効性(標治)を期待するのか?
- 体質改善(本治)を目指すのか?
ここを明確にして、ゴールに合った服用期間を設計することです。
■ まとめ:漢方は“短期決戦”と“長期戦”を組み合わせて使う
- 今つらい症状には、即効性のある漢方(標治)を使い、
- 体質の土台を整えるには、じっくり続ける漢方(本治)を使う。
この使い分けができるようになると、漢方はグッと面白くなります。
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いかがでしたか?
今回は「漢方薬の即効性と体質改善の違い」について解説しました。
次回は、実際に体質改善でよく使われる代表的な処方を深掘りしていこうと思います。
それではまた!