救心(メモ)

以下、救心に配合されている各生薬について、富山大学和漢医薬学総合研究所の伝統医薬データベースの記載に基づく「性味・帰経」と「効能」を明示し、さらに実際の臨床現場で使用する際の特徴を併せてまとめました。


蟾酥(センソ)

  • 性味・帰経:辛・温、心経 (Dentomed)
  • 効能:解毒・止痛・開竅醒神 (Dentomed)
  • 現場特徴:強い中枢興奮作用をもち、ショックや急性疼痛時の「気つけ薬」として少量用いられることがあるが、過量で興奮・痙攣を起こしやすいため慎重投与が必要。

牛黄(ゴオウ)

  • 性味・帰経:甘・涼、心・肝経 (Dentomed)
  • 効能:清心・去痰・開竅・涼肝・息風・解毒 (Dentomed)
  • 現場特徴:熱性痙攣や急性熱性発作時に鎮静・解熱目的で用いられる。高価かつ希少なため、通常は六神丸や救心のような複方中でごく少量配合される。

鹿茸(ロクジョウ)

  • 性味・帰経:甘・鹹、温、腎・肝経 (Dentomed)
  • 効能:強壮・強精・鎮痛 (Dentomed)
  • 現場特徴:慢性疲労や虚弱体質、性機能低下時の補益薬として使われる。温補作用が強い一方で発汗やのぼせを生じやすいため、陽性の虚証に限定して用いる。

人参(ニンジン)

  • 性味・帰経:甘、平、脾・肺経 (Dentomed)
  • 効能:補気・健脾・養心・鎮静・抗疲労 (Dentomed)
  • 現場特徴:体力低下や食欲不振、動悸息切れに広く用いられるベーシックな補気薬。長期処方でも安全性が高く、ほぼすべての虚証向け漢方に配合される。

羚羊角(レイヨウカク)

  • 性味・帰経:鹹、寒、肝・心経 (Dentomed)
  • 効能:鎮静・解熱・抗炎症・息風止痙 (Dentomed)
  • 現場特徴:高熱による痙攣や興奮状態、頭痛に用いられる。強い凉血・鎮静作用ゆえ、陰虚火旺の痙攣性疾患に限定して適用。

真珠(シンジュ)

  • 性味・帰経:平(水)、肝・心経 (Dentomed)
  • 効能:安神定驚・明目・解毒生肌 (Dentomed)
  • 現場特徴:不眠・動悸・めまいなどの神経過敏症状に配合。粉末化して丸剤に用いられ、穏やかな鎮静効果が特徴。

沈香(ジンコウ)

  • 性味・帰経:辛・苦、微温、脾・胃・腎経 (Dentomed)
  • 効能:行気止痛・温中止嘔・納気平喘 (Dentomed)
  • 現場特徴:冷えによる腹痛や胸闷、しゃっくり、喘息発作に用いられる。芳香性ゆえ、気滞による消化器症状に有効である。

動物胆(ドウブツタン)

  • 性味・帰経:苦、平、肝・胆経 (Dentomed)
  • 効能:解熱・鎮痛・利胆・消炎・苦味健胃 (Dentomed)
  • 現場特徴:黄疸や消化不良、胆のう炎症状に配合。苦味健胃として消化器機能を高めると同時に、炎症抑制作用を期待して使用される。

龍脳(リュウノウ)

  • 性味・帰経:辛・苦、微寒、心・脾・肝 (イチネット)
  • 効能:開竅醒神・清熱止痛・防腐消腫・明目 (イチネット)
  • 現場特徴:芳香開竅作用に優れ、ストレス性の動悸や息切れ、小児の突発性難聴、神経性のめまいなどに配合される。小児鎮静剤としても利用されるほか、配合するだけで製剤に爽やかな香りを付与する。

参考:

  • 伝統医薬データベース(富山大学和漢医薬学総合研究所) (Dentomed)
  • 白井光太郎監:『國譯 本草綱目』春陽堂,昭和9年(龍脳 性味・帰経・効能) (イチネット)

一般向け説明

救心は、心身のバランスを整え、急な動悸・息切れや立ちくらみ、めまいなど「心の働きが弱まった感じ」をサポートする漢方薬です。以下のような特徴があります。

  • 即効性のある“気つけ薬”的作用
    • 蟾酥(センソ)や龍脳(リュウノウ)などの気つけ薬や、沈香(ジンコウ)という気の通りを良くする薬が意識をはっきりさせます。心をスッと晴らして頭がぼーっとするような状態を改善します。コーヒーの香りで目がスッキリ覚めたり、ミントタブレットとか口に入れたら意識がすっと通る感じがするのとまあ似てます。
  • 心身を守る“クールダウン&鎮静”
    • 牛黄(ゴオウ)や羚羊角(レイヨウカク)の凉性(ひんやり作用)が、興奮して熱くなった心(=情緒の高ぶり)を静め、過緊張による頭痛や不安感をやわらげます。
    • 真珠(シンジュ)がふわりとした鎮静感を与え、不眠や焦り、動悸といった神経の高ぶりを抑えます。
  • 元気を支える“補気&補血”
    • 人参(ニンジン)や鹿茸(ロクジョウ)の温補作用で、疲れやすい・息切れしやすいといった「元気が足りない」状態を底上げ。
    • 動物胆(ドウブツタン)の苦味が消化を助け、全身のエネルギー循環をスムーズにします。

こんなときにおすすめ

  • 急に心臓がドキドキして不安になる
  • 立ちくらみやめまい、気が遠くなりそう
  • 緊張やストレスで夜も眠れない
  • 慢性的に疲れていて、気力が湧かない

パニックやショック、過労・ストレスで心身が「キャパオーバー」になったときに、内側から落ち着かせつつ、元気を取り戻す手助けをしてくれるのが救心です。コンパクトな丸剤で携帯もしやすく、いざというときの“駆け込み薬”としてご家庭に一本あると安心です。

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