アイソトニック、ハイポトニック、経口補水液

「特別用途食品の表示許可等について」(令和元年9月9日付消食表第296号消費者庁次長通知)の一部改正内容と、経口補水液(OS-1など)への影響を整理しました。


1. 改正の概要

  • 令和6年12月10日付で、健康増進法に規定する内閣府令(特別用途表示の許可等に関する内閣府令)の一部改正が公布・施行されました (日本栄養士会)。
  • 同日付で「特別用途食品の表示許可等について」の次長通知も改正され、経口補水液が「許可基準型病者用食品」として新設されました (消費者庁)。

2. 適用開始日

  • 経口補水液に関する販売方法等の留意事項は、2025年6月1日(日)から適用されます (日本栄養士会)。

3. 新設されたカテゴリ:許可基準型「経口補水液」

  • 従来の「個別評価型病者用食品」に加え、
    • 感染性胃腸炎などによる脱水症の食事療法(経口補水療法)に用いる経口補水液として、
    • 許可基準型病者用食品の一つに明確に規定されました (消費者庁)。
  • 表示できる用途は「脱水症のための食事療法に用いる旨」のみで、個別疾患名の掲載は不可です (消費者庁)。

4. 販売時の確認・表示義務

  • 実店舗販売
    1. 医師、管理栄養士、薬剤師等の医療関係者※が、「医師の指示があるか」を確認できる体制の整備
    2. 一般清涼飲料水と明確に区別し、「病者用食品である」旨をシールやポップで明示
    3. 陳列方法は別途通知(令和5年11月20日付「陳列・掲示について」)を参照 (消費者庁)
  • ネット販売
    • 購入画面に「医師の指示がある場合に限り購入」等の確認欄(チェックボックス)を設ける仕組みを必須とする (消費者庁)
  • 自動販売機
    • 「医師から指示された場合に限り用いる旨」「医師、管理栄養士等から相談、指導を得て使用する旨」を、購入時に確実に認知させる仕組みを有すること (消費者庁)
  • ラベルレス製品の販売は禁止 (消費者庁)

※「医療関係者」とは、医師・管理栄養士のほか、適切な使用方法を説明できる薬剤師、看護師、登録販売者等を指します (消費者庁)。


5. お店での対応イメージ

  • 2025年6月1日以降、OS-1等の経口補水液を購入する際に、店頭で薬剤師や販売員から「医師の指示はありますか?」と尋ねられるケースが増えます。
  • これは上述の「医師の指示があるかを確認する体制」を実地するための対応であり、指示がない限り販売できない仕組みとなります。

以上のように、来月(2025年6月1日)からは、OS-1などの経口補水液を「医師の指示なし」で販売・購入することができなくなります。店舗やWEBサイトでは、必ず指示の有無を確認する手続きや表示が義務づけられますので、ご注意ください。

3つの飲料区分と基本スペック

区分浸透圧の目安糖濃度の目安ナトリウム量の目安代表的な製品例
アイソトニック(等張)体液と同程度 ≈ 280–300 mOsm/L (プレシジョン PRECISION Fuel & Hydration)4–6 % (グリコ)20–50 mEq/L(製品差あり)ポカリスエット®, アクエリアス®, GREEN DA・KA・RA
ハイポトニック(低張)体液より低い ≈ 150 mOsm/L2–3 %10–30 mEq/Lポカリスエット イオンウォーター®, アクエリアス ZERO®, ヴァームスマートフィットウォーター®
経口補水液(ORS)軽度の低張~等張(WHO ORS ≈ 245 mOsm/L)2.5–3 %40–60 mEq/L(例:OS-1はNa ≈ 51 mEq/L/500 mLに食塩1.46 g)オーエスワン®(液・ゼリー・パウダー)、アクアソリタ®, 経口補水液ダイレクト®

ポイント

  • ハイポトニック飲料は「水分を素早く胃から腸へ送る」ことを最優先に組成されており、糖と塩は控えめ。
  • 経口補水液は「失った電解質を確実に戻す」ため、ナトリウムがスポーツ飲料よりはるかに多く、高血圧・腎疾患では注意。

臨床での使い分け(薬剤師の現場目線)

シーン何を選ぶか理由と実践上のコツ
① 運動前/軽い発汗が予想されるアイソトニックエネルギー源(糖)と電解質補給を開始時点でバランス良く確保。糖が4–6 %あるため血糖維持にも◎。
② 運動中・直後/大量発汗中ハイポトニック胃排出が速く、水分が先に補給される。糖・Naが少ないので連用しても胃もたれしにくい。citeturn0search1
③ 発汗+明らかな脱水症状(口渇・めまい・尿量低下など)経口補水液Na ≧ 40 mEq/Lで腸からの水・Na同時輸送を最大化。熱中症I度・胃腸炎・高齢者の脱水に。医師指示のもとで中等度まで対応可。citeturn0search0turn0file0
④ 日常生活の軽い水分補給水・お茶・ハイポトニック(少量)甘味摂取・塩分過多を避ける目的。スポーツドリンク常飲は虫歯・カロリー過多のリスク。

注意・禁忌のチェックリスト

  1. 高血圧・腎機能低下
    経口補水液500 mLで味噌汁1杯の塩分に相当。日常的に飲むと塩分オーバーになる 。
  2. 糖尿病・減量中
    アイソトニックは糖4–6 %(500 mLで約25 g)。連用は血糖・カロリーに配慮。
  3. 小児・高齢者
    経口摂取が困難/意識障害を伴う場合は即受診(熱中症分類II度以上) 。
  4. ハイポトニック一本化の現場テク
    手間を減らすならハイポトニックをベースにし、必要に応じ塩タブレットでNaを追加する方法もある(運動10 km以上・猛暑日など)。

まとめ(エッセンス)

  • アイソトニック:準備の飲み物—エネルギーも塩も「ほどほど」を一気にチャージ。
  • ハイポトニック:走りながら飲む水代わり—スピード吸収で脱水を先回り。
  • 経口補水液:治療的ドリンク—脱水発症後の“経口点滴”、塩分量には要注意。

状況ごとに張り付きやすいキーワードで患者さんに説明すると理解が早いです。現場ではまず「どれだけ汗をかいたか?」を質問し、上記フローチャートで迅速に選択肢を提案してください。

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