げっぷに対する安中散と半夏厚朴湯の使い分け

接客の時に聞かれました。 安中散もゲップにいいと聞きましたが、半夏厚朴湯のゲップの作用と何が違うのですか? この2種類を一緒に使っても大丈夫ですか?

結論

どちらもげっぷに使えるが、証によって使い分けが異なります。

また、併用することは通常あまり考えにくい組み合わせになります。

安中散をげっぷに使う場合

安中散は胃の冷えをとることで、胃気の上逆を抑える薬です。

胃が冷えてしまうほど脾胃が虚弱で、寒邪(冷えの病邪)に簡単に入られてしまって胃が冷やされている人向けの薬になります。

胃の機能は「食べ物を降ろすこと」なので、胃が冷えてこの機能が損なわれると、胃の内容物が濁陰となって上逆します。冷えたエネルギーが上がってきてげっぷになるイメージです。

半夏厚朴湯をげっぷに使う場合

半夏厚朴湯は痰気互結という証に使います。痰が気とくっついて詰まってしまった状態です。

こちらは元々の胃腸機能はそこまで弱くない人に使います。理由としては厚朴を含んでいる為です。

厚朴は瀉剤の1つであり、胃などに停滞して詰まった痰や気を追い出すような役割があります。

「詰まったり固まったりしている感じ」が厚朴を使う際の目安で、表情や話し方なども固い印象になる傾向にあります。

使い分けの目安

安中散は「胃を温めるエネルギーが足りてない人」に対し、温めて気を巡らせてあげる薬なので「足りないものを補う」というベクトルです。つまり虚証向けです。邪は「寒」がメインで、他に風や湿の邪もいるような感じです。湿も半夏厚朴湯の証みたいな「痰」よりは冷えているのでさらさらした「水湿」や「水飲」などのことが多いです。あくまで冷えと胃痛がベースなので、湿の種類は参考程度です。

半夏厚朴湯は「胸に過剰に詰まって固まった痰や気をガツンと散らす」というベクトルで、どちらかというと実証寄りの薬です。溜まっているものは「気」や「痰」です。吐き気やげっぷなどの症状も激しめのことが多いです。また、胃熱が強い場合は半夏厚朴湯よりも半夏瀉心湯や、生姜瀉心湯(半夏瀉心湯+生姜)などを使うことが多いです。

いずれにせよ安中散の証になるような「体力虚弱で胃が冷える、胃を温めるパワーのない人」が、

「痰や気が詰まっていっぱいになり胸が苦しい」という半夏厚朴湯の証になることは通常考えにくいので、併用はあまりしません。たぶんどちらか片方の証に決まることが大半だと思います。

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